弁護士 伊東克宏のブログ

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相続法改正(要綱案)が施行されたらどうなるか?

平成30年2月16日,法制審議会の総会において,「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案が施行になりました。

(詳しくはこちら→ http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900346.html

項目タイトルだけで概略をまとめると以下のとおりです。

  • ① 配偶者居住権の保護方策
    ⅰ 短期的保護
    ⅱ 長期的保護
    ② 遺産分割の見直し
    ⅰ 配偶者保護のための持戻し免除の意思推定
    ⅱ 預貯金の仮払い制度の創設
    ⅲ 一部分割の明文化
    ⅳ 遺産分割前の財産処分の場合の規律明文化
    ③ 遺言制度の見直し
    ⅰ 自筆証書遺言の目録の要件の緩和
    ⅱ 自筆証書遺言の保管制度の創設
    ⅲ 遺贈の担保責任規定の明文化
    ⅳ 遺言執行者の権限の明確化
    ④ 遺留分制度の見直し
    ⅰ 遺留分減殺請求権行使の効果の金銭債権化
    ⅱ 遺留分算定方法の特別受益分の減縮等の見直し
    ⅲ 遺留分侵害額の算定における債務消滅の規律明文化
    ⑤ 相続の効力等の見直し
    ⅰ 指定相続分も無権利の法理でなく対抗問題とする明文化
    ⅱ 相続債権者は指定相続分にかかわらず法定相続分で権利行使できることの明文化
    ⅲ 遺言執行者がある場合の相続財産処分も無権利の法理ではなく対抗問題とする明文化
    ⑥ 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策の明文化

まあ,ブログだということでお許しいただき,多少悪ふざけを交えた改正後の予測は,以下のとおりです。

1 税理士が配偶者居住権を使った様々な節税スキームを考え出す。(まあ,どんな新しい制度もそうなんですが。)

2 亡くなってから預金をおろすのはあいかわらず面倒。(なので,他界直前にまとまったお金をおろすケースは減らず。)

3 自筆証書遺言が増え,公正証書遺言が少なくなる。その分,公証役場の売上げが減る。(それでも公正証書遺言には偽造防止や信頼性確保のメリットはあります。)

4 遺言執行者に対する過誤賠償請求が増える。(権限の範囲が明確になりましたので。)

5 相続(人)対策はとにかく早めの生前贈与と贈与税対策。贈与後に生きて10年経過すれば事業承継はこれでOK。(相続人への贈与が10年分しか加算されなくなるのは,結果,有利になる人,不利になる人,ものすごく影響が大きいところなのですが,誰も騒がないんですね-。10年後の話だからいいか・・。)

6 法務局への自筆証書遺言付き添いビジネスができる。早め早めの相続登記をしないとリスクが高まる。結果,法務局での仕事が多い司法書士が儲かる。(・・かもしれない。)

7 自筆証書遺言の有効性を巡る争いが増える。(欲しいだけの財産を記載した目録を好き勝手に作って,それに「目録の財産をAに相続させる」と自筆で書かせて目録を添付し,理解に乏しい高齢者をテキトーにごまかしながら法務局に連れて行く悪用方法は可能ではないか?)

8 遺留分訴訟は,これまでよりは,シンプルかつ短期間で終われる。(・・かな。)

9 妻子がいても,故人の面倒を見た兄弟(法定相続人でない親族)が多少は寄与分を認めてもらえるかも。(愛人や友人が面倒見ても“寄与分なし”は変わりません。)

どうでしょうか?

間違えていても文責負いません。悪しからず。

(平成30年5月29日 弁護士 伊東克宏)

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2018年5月29日、カテゴリー:「日々あれこれ」(日記)

弁護士 伊東克宏

弁護士 伊東克宏

相続・離婚を中心とした一般民事事件のほか,会社法務にも対応。弁護士として10年以上のキャリアを有する。

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