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租税訴訟

税務調査から訴訟までのおおまかな流れ

まず,おおまかな流れについて図解します。それぞれの不服申立の期限に気をつけてください。
納税者が申告を行い、これに対して課税庁が税務調査を行います。納税者の提出した申告書に対して、課税庁が異なる見解を有した場合には、2つの処理が考えられます。

  1. 納税者が課税庁の見解に従って、訂正後の申告書を再度提出する方法(修正申告)
  2. 課税庁が職権で、訂正の行政処分を行う方法(更正)です。

修正申告は、納税者が当初の申告の誤りを認め、訂正するわけですから、それに対して不服申立てはできません。課税庁の更正は行政処分ですから、納税者は不服申立てを行うことができます。

税務調査から訴訟までのおおまかな流れ

税務署長から更正処分を受け,その処分に不服がある場合には,不服申立の手続をとることになります。いきなり訴訟をするわけにはいきません。取消訴訟(税務行政処分が違法であることを理由として、その取消しを求める訴訟)の場合には,異議申立てのできる処分については異議決定を、審査請求のできる処分については審査裁決を、それぞれ経た後でなければ出訴できない(国税通則法115条)こととなっています。

不服申立で気をつけなければならないのが,不服申立の手続には期間の制限があり,期限を徒過してしまった場合は,天災等のやむを得ない理由がないかぎり,却下されるということです。
不服申立手続きの第1段階は、処分行政庁に対する異議申立手続きです。この異議申立は、原則として処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2か月以内にしなければなりません。

異議申立てに対する決定になお不服がある場合には、不服申立手続きの第2段階として、国税不服審判所長に審査請求をすることになります。この審査請求は、原則として、異議決定を経たものについては異議決定書の謄本が送達された日の翌日から起算して1か月以内に、また、直接審査請求をすることができる場合は原処分に係る通知を受けた日の翌日から起算して2か月以内にしなければならなりません。なお、異議申立てをした日の翌日から3か月を経過してもなお異議決定がない場合は、異議決定を待たずに審査請求をすることができます。

審査請求に対する裁決になお不服がある場合、納税者は原処分の取消しを求めて地方裁判所に訴訟を提起することができます。取消訴訟は、裁決があったことを知った日から6か月以内に提起しなければならないとされています。

異議申立と審査請求のいずれかを選択することが出来る場合

以下の場合には,不服申立の際,異議申立か審査請求のいずれかを選択することができます。

  1. 所得税法もしくは法人税法に規定する青色申告書に係る更正に不服があるとき
  2. その処分をした者が、その処分につき異議申立てをすることができる旨の行政不服審査法の規定による教示をしなかったとき
  3. その他異議申立をしないで審査請求をすることにつき正当な理由があるとき
    ただし,上記の場合も,原則として処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には、その受けた日)の翌日から起算して2か月以内に不服申立しなければなりません。
    なお,以下の場合には,異議決定を経ずに審査請求が可能です。
  4. 異議申立をした日の翌日から起算して3か月を経過しても異議申立についての決定がないとき

不服申立の手続の前にしておきたいこと

不服申立の手続きに入る前に、可能であれば、増差税額および過少申告加算税、延滞税等の附帯税の納付もしておくことが望ましいです。納税者側としては承服しかねる処分をされ、納付に抵抗がある場合も多々あると思いますが,納付を滞ると、納付すべき延滞税の額も増加していくことになり敗訴の場合の負担額が大きくなります。また、滞納に係る処分の取消訴訟が係属中であっても、原則として、国税の徴収手続きは続行される(通則法第105条第1項本文)ため、財産の差押え等の危険もあります。

税務調査の際に気をつけたい事項

必要と認められる適切な資料を調査官に示せばよい

税務署または国税局の職員の検査を拒否し,妨害し,もしくは忌避し,または質問に対して答弁せず,もしくは偽りの答弁をした場合や,当該検査に関し偽りの記載または記録をした帳簿書類を提示した者に対しては,罰則規定があります。しかし,事務所内の書棚やキャビネットから始まり,従業員の机の中やロッカーまで,すべてを調査官の求めに応じるまま開けてみせる必要はありません。調査対象期間の帳簿類,証憑類を調査官の閲覧に供した後は,提出資料をもとにした上で,何の目的で,何が記載された資料を必要としているのかを聞き取り,必要と認められる適切な資料を調査官に示せばよいのです。

安易に修正申告を行ってはいけません

一般的な場合、調査が一通り終了すると、一定の期間の後、調査官より指摘事項なるメモが示されます。これらの項目に関する処理が適当とは認められないとの理由で、修正申告の行政指導がなされます。この時点で,双方の見解が一致していれば、修正申告をすることで調査は終結しますが,見解の相違がある場合には、安易に修正申告を行ってはいけません。

更正通知が届いたら顧問税理士と連絡を

修正申告をしないと,税務署長から更正処分を受けるわけですが,更正通知は納税者のもとに送付され、税務署から顧問税理士に対する直接の連絡はなされない場合が多いのです。調査が終結して一段落した後は、顧問税理士と連絡を密にしておくことが望ましいです。

過大申告をしてしまった場合の是正を求める手続

過大申告等の是正を求める手続として,「更正の請求」があります。過少申告等の是正の手続である修正申告には期限が設けられていないのに対し、更正の請求は、原則として法定申告期限から1年以内に限られており、期限を徒過してしまった場合、救済措置はありません。
納税者が更正の請求を行った場合、通常、税務署において所要の調査が行われ、減額更正処分または更正をすべき理由がない旨の通知処分が行われます。場合によっては、調査により、納付すべき税額が増加したとして、増額更正処分がなされることもあります。
この、「更正をすべき理由がない旨の通知書」を受け取り、不服である場合にも、「更正処分」に対する不服申立手続きと全く同様の手続きをとることができます。

更正処分を受けるか,更正の請求をするか

納税者と課税庁の間に見解の相違がある場合の争い方には以下の2通りがあります。

  1. 納税者の見解通りの申告を行い、更正処分を受ける
  2. 課税庁の見解通りの申告を行い、更正の請求をする

この2つの方法では、どのような点が相違するかについて以下に解説いたします。

加算税の有無

まず、上記(1)、(2)で大きく相違するのが、過少申告加算税が賦課されるか、賦課されないかの点です。過少申告加算税は、いわばペナルティであり、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出または更正があったときに、当該修正申告または更正による増差税額の100分の10が賦課されるものです。

一方、いったん課税庁の見解通りの確定申告をした後に更正の請求をする場合は、“過大申告"をしていたことになるので、加算税というペナルティは発生しません。

争いの対象となる税額が少ない場合には、10%という金額はそれほど負担になりませんが、本税が多額である場合においては、過少申告加算税だけでもかなりの金額になり、しかも、それが3年分賦課されるとすると、経済的な負担は相当重いものになります。
当然、他の事項を考慮する必要がないのであれば、納税者にとって、キャッシュ・アウトが少ない後者((2))の方が有利といえます。

立証責任をどちらが負うのか

納税者が更正処分を受けた場合の立証責任は課税庁側が負うのに対し、納税者が更正の請求を行った場合の立証責任は納税者側が負う、というのが通説です。課税庁の行う更正処分は、納税者が行った税額の確定を覆す行為ですので,「一般に、必要経費の点も含め、課税所得の存在については課税庁に立証責任があると解すべきである」(大阪高判昭和46.12.21)とされています。実際の税務訴訟においても、課税庁は、被告の主張を述べる準備書面の中で必ず、処分の根拠・適法性という項目を立てて、詳細に立証を行っています。

一方、更正の請求を行った場合には、すでに“自己の正しい税額"を確定(確定申一告書の提出)させておきながら、“前言撤回"(更正の請求)するわけですから,納税者側に立証責任を求められても当然とも言えます。

ただ,立証責任とはいっても、ことさら難しいわけではありません。すでに提出済みの申告書は誤っており、真実の所得は更正の請求書に記載のとおりである、ということが証明できればよいのです。なぜ更正処分を受ける方法ではなく、更正の請求をする方法を選択したか、を説明する必要はないのです。具体的な証拠としては、当時の契約書や当事者の陳述書,争点に係る論評・著名な学者の意見書などを提出することになります。

税務訴訟について

税務訴訟には、次の6つがあります。

  1. 取消訴訟
    税務行政処分が違法であることを理由として、その取消しを求める訴訟。
    取消訴訟の訴訟要件として,
    【不服申立前置主義】異議申立てのできる処分については異議決定を、審査請求のできる処分については審査裁決を、それぞれ経た後でなければ出訴できません。(国税通則法115条)。
    【出訴期間】取消訴訟は、処分又は裁決のあったことを知った日から3ヶ月以内に提起しなければならず、また、処分又は裁決のあった日から1年を経過したときは提起ることができません(行政事件訴訟法14 (1)(3) )。
  2. 無効確認訴訟
    税務行政処分に無効原因たる違法性があることを理由として、それが無効であることの確認を求める訴訟。出訴期間の制限はなく、また、不服申立前置主義の適用もありません。
  3. 争点訴訟
    税務行政処分が無効であることを理由として、私法上の請求をする訴訟。
  4. 不作為の違法確認訴訟
    課税庁が、租税法規に基づく申請に対して、相当の期間内に何らの処分もしない場合に、その不作為の違法の確認を求める訴訟。
  5. 過誤納金還付請求訴訟
    過誤納金の還付を求める給付訴訟。
  6. 国家賠償請求訴訟
    税務職員の違法な公権力の行使によって受けた損害の賠償を国又は地方自治体に求める訴訟(純粋な民事訴訟)。