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不貞慰謝料額の算定において判断される事情~「男と女の法務」より

前々回のブログ「男と女の法務」において,不貞慰謝料について,最近の裁判所は

離婚しない場合  150万円
 離婚する場合   300万円

が相場であると書きました。
それはたぶん多くの弁護士に共感してもらえることで,修正するつもりもないのですが,他方で,「裁判所は,上記基準をベースに増減させる」とも書きました。
で,今回は,裁判所が,離婚に至ったか否か以外に,どのような事情をくみ取って慰謝料額を決めているのか?について,書きたいと思います。

以下の事例を設定します。

「原告X(夫)が,不貞をしたY1(妻)とその不貞相手Y2(男)の二人を相手に慰謝料請求訴訟を提起しました。」

裁判所が考える判断要素は様々だと思いますが,主要なところは,以下のとおりかと考えます。

〈XとY1間の事情〉
 ○婚姻期間
 ○未成年子の有無,年齢
 ○不貞開始時の夫婦関係
(不貞開始時点で夫婦関係が破綻していれば慰謝料請求を否定した判例(平成8年3月26日最高裁判決)もあり,破綻まで至らなくてもすでに関係が悪化していれば,慰謝料額において考慮されることも少なくありません。)

〈Y1とY2間の事情〉
 ○交際期間(男女として交際していた期間)
 ○交際回数(頻回に食事にでかけていた,など)
 ○不貞期間(肉体関係を持っていた期間)
 ○不貞回数(肉体関係を持った回数)
 ○Xからの警告やXとの合意後の不貞行為の有無

上記以外にも,裁判所は,様々な事情を「総合考慮」して慰謝料額を判断していますが,裁判例を見ても個別事情が多く,たとえば,「Y1のXへの謝罪」を考慮している裁判例があったからと言って,謝罪したら許されるということでもないでしょうから,それがすべての事案において考慮されることは無いように思います。
上記に掲げた主要な事情は,多くの場合,こうした事情は考慮されているということですが,たとえば,「婚姻期間5年以上の夫婦を破綻させたから○ポイント」,「交際期間が3年だから○ポイント」といった評点表があるわけでもありません。

そもそも,不貞行為の証拠は,○月○日のメールや写真といった1場面に限られているものが多く,裁判官も神様ではありませんから,双方の意見が異なる中で,そこから「交際期間」や「不貞回数」を推測すると言っても,限界があります。
裁判官がその限界を感じて,そうした個別事情の判断を放棄した結果が,最近,「離婚しない場合→150万円,離婚する場合→300万円」といった,原則一律基準の適用が多くなった原因ではないかと思う次第です。

なお,裁判の現場において,双方から出される主張は様々であり,実際に私が経験したところでは

△Y2は高額所得者だから増額すべきである。
△Xは,Y2の妻に「Y2が不倫している」と通知し,Y2に苦痛を与えたから減額すべきである。

などがありますが,判決の場面で「高額所得者だからたくさん慰謝料を支払え」と言われることはまずないですし,また,毎夜電話をかけるなど,度が過ぎた違法行為でもない限り,「妻にバラしたから慰謝料を減額する」と言われることもほぼないと思います。
もちろん,それらは,当事者の気持ちとして無視できない事情であることもあり,主張すべき事情として主張すること自体,否定するものではありません。

また,Y1とY2間の事情として,Y1の側から

×Y2が執拗にY1を誘ってきた。

等の事情が主張されることがありますが,Xとの関係では共同不法行為と言って,Y1とY2のふたりが全額の損害賠償責任を負う関係にありますので,通常は,Y1とY2との責任分担の問題に留まると思います。

実際の弁護士の仕事では,相談者や依頼者の方からうかがう様々な事情や事実関係の中から,証拠の有無も含めて,裁判所が考慮してくれそうな事情たとえ裁判所が考慮してくれないとしても指摘しておきたい事情などを峻別し,構成していくことになります。

悩んでおられる方は,まずは法律相談にいらしてください。

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(「男と女の法務」は,和泉彰宏税理士のブログ「男と女の税務」に勝手に対抗しており,これで3テーマ書いたので並んだはず・・と思います。)

2017年10月24日、カテゴリー:「男と女の法務」

弁護士 伊東克宏

弁護士 伊東克宏

相続・離婚を中心とした一般民事事件のほか,会社法務にも対応。弁護士として10年以上のキャリアを有する。

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