弁護士 伊東克宏のブログ

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相続税改正→相続争いの増加→遺言書作成の必要

1 相続税法改正
ご存知のとおり,平成27年1月1日以降にお亡くなりになる方の相続から,改正された新しい相続税法の適用になります。
税の専門家ではないので,詳しいことは「餅は餅屋で,税理士の先生に」ということで逃げようと思いますが,私が注目する大きなポイントは2つです。
① 基礎控除額が下がること
平成26年末まで 5000万(配偶者)+1000万×相続人数
平成27年以降  3000万(配偶者)+600万×相続人数
② 小規模宅地の特例の範囲が広がること
平成26年末まで 特定居住用宅地は240㎡まで
平成27年以降  同上 360㎡まで
平成26年末まで 自宅土地と事業用土地の併用は400㎡まで
平成27年以降  同上 730㎡まで

①によりどういうことが生じるかというと,必然的に,相続税を納めなければならなくなる方,納めなければならない相続税額が増えます。
結果,これまでより多くの方が,相続税対策に関心を持たざるを得なくなります。

②によりどういうことが生じるかというと,相続税対策として,現金預金ではなく,不動産で所有していた方が有利な場合が増えます。

その結果,相続税対策として,現金預金ではなくして,相続財産を不動産として遺す割合が増えると考えます。

2 相続争い(争族問題)の増加
私は,講義などでよく「『相続対策』と一言で言うけれども,『相続税対策』と『相続人対策』があって,それらはまったく違う。税務署を向いた方針と,相続人を向いた方針が,真逆になることもありますよ。」という話しをします。
典型的なものが不動産で,相続人間で争うケースの多くに,その不動産を誰が取得するか,それをいくらで評価するか,といった問題が絡んできます。
相続財産に,現金・預金しかないなら,遺産分割など至極簡単な話しです。
ケンカをさせたくないのであれば,現金・預金のみの法定分割に限ります。
他方,相続税対策を考えれば,現金・預金では何の工夫もありませんから,これだけを見ても相続税対策と相続人対策は違うと言えます。

3 遺言作成の重要性
そうして,相続税対策のために不動産の取得を考える方に対しては,「自社株と不動産をお持ちの方は遺言書を作成しなさい。」と言うことになります。
(自社株の問題は,HP中に記載しているのでそこに譲ります。)

不動産をお持ちの方は,せめてその不動産を誰に取得させるのか,決めてあげてください。
「みんな仲良く共有してもらって・・」はダメです。
おそれずに厳しい言葉を使えば,無責任です。
兄弟だって結局は他人です。仮にその兄弟が仲がよくても,次の世代が仲が良いとは限りません。
1つの不動産の承継者は1人に決めて,そのほかの子にはその他の資産で手当してあげるのが良いと思います。

不動産の取得者を予め決める方法は,生前贈与しておくか,遺言しかありません。

決めておかないと,遺された方が,揉めたくもないのに揉めることになります。
遺すのなら,あなたが「こうしてね。」と決めてあげてください。
1つしか不動産が無いのなら,なおさら1人に決めてあげてください。
納税費用を工面するために売却しか手段がない,あるいは,誰もその不動産に取得する必要がないというケースであれば,「売却して納税の上,残代金をふたりで分けなさい。」と決めてあげる方法もあります。
ケンカするのが目に見えている2人兄弟なら,遺言執行者を誰にするか指定しておかないと,売却を誰が主導で行うのかから揉めますから,それも決めておく必要があります。

このように,遺言を作成する場合には,相続税対策も大事ですが,相続人対策も大事です。
弁護士に相談すれば,相続財産全体の価額をシミュレーションをした上で遺留分の問題は生じないかも検討し,寄与分,特別受益などのこれまでの個別事情に配慮しながら決めていくことになります。
同時に税理士のアドバイスを得ることももちろん可能です。
遺言作成のご相談は,是非当事務所へ。

(平成26年10月8日 弁護士 伊東克宏)

2014年10月8日、カテゴリー:「日々あれこれ」(日記), 弁護士 伊東克宏ブログ

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弁護士 伊東克宏

相続・離婚を中心とした一般民事事件のほか,会社法務にも対応。弁護士として10年以上のキャリアを有する。

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