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借地借家の問題

借地の問題

借地権の種類

普通借地権 存続期間は30年とされますが,これより長い期間を定めることができます。更新後の存続期間は最初の更新で20年,2回目以降の更新で10年です。更新には借地人が更新の請求をすることが必要ですが,地主が異議を述べ,「正当事由」があれば契約の更新は認められません。
定期借地権 一定期間の経過により消滅する借地権です。定期借地権には,3つの種類(一般定期借地権,建物譲渡特約付借地権,事業用借地権)があります。一般定期借地権,事業用借地権については,その設定を公正証書等の書面によることが必要とされています。
自己借地権 土地所有者みずからが,自己の土地に借地権を設定したばあいです。
一時使用目的の借地権 臨時設備の設置その他,一時使用のために設定された借地権です。存続期間,契約の更新,建物買取請求権,借地条件の変更および増改築の許可,更新後の建物再築の許可,定期借地権の規定が排除されています。

契約の更新

貸主が更新料の支払いをうけることを望むばあいには,更新料支払いの特約をしておく必要があります。更新料を支払うことが事実たる慣習となっており,特約がなくても借主に更新料の支払義務が発生することがあるとの考え方もありますが,判例はこの考え方を否定しています【最判昭和51・10・1判時835号63頁】。

更新料の額

東京,横浜地区などでは,一般的には,借地権価額の「3ないし5パーセントの範囲」で決められているようですが,明確な基準はありません。

地代の増減請求

近傍類似の土地の地代に比較して地代が不相当になったとき,土地に対する租税その他の公課の増減により地代が不相当になったときは,請求後の将来の地代について地代の増減を請求できます。増減請求に根拠を示す必要はありません。

調停前置

地代増減の協議が整わないばあいには,訴訟を提起する前に,簡易裁判所に増減調停を求めることが必要です。増額の請求をうけた借主は,請求金額に不満のあるとき,借主が相応と考える額を支払わなければなりません。支払わなければ,地代不払いで契約解除の原因とされることもあります。貸主が受領しなければ,借主は法務局に供託しなければなりません。調停等で正当として決められた額と,借主が支払った額ないし供託した額とに差があるときは,借主はその差額に年1割の利息を付加して支払わなければなりません。

賃借権の時効取得

賃借権を主張する者が,賃貸借契約締結時に賃借権を有効取得したと信じ,信じたことに過失がなければ10年間,有過失や悪意であれば20年間,賃料を支払って当該不動産の占有使用を継続していれば,賃借権の時効取得が認められることがあります。

借地契約の解除

地代の支払義務は,借地人の中心的な義務であり,借地人がその支払いを怠っている場合には,地主は契約の解除をすることができますが,まず,借地人に対して相当の期間を定めて,滞納地代の支払いの催告を行う必要があります。契約の解除をするには,一般的には,6か月から1年の不払いがあることが必要です。

借家の問題

法定更新と契約期間

借家契約において,一方当事者が契約を更新したくないばあい,期間満了前の1年から6ヶ月までの間に,相手方に対して契約を更新しない旨の通知をしなくてはなりません。また,賃貸人が契約更新を拒絶するには,更新を拒絶することについて正当な事由のあることも必要です。(法26条1項)。したがって,賃貸人がこの契約更新拒絶の事前通知をしないかぎり,借家契約は自動的に更新(法定更新)されたこととなります。なお,賃貸人が事前に更新拒絶の通知を行ない,更新拒絶につき正当な事由が認められるとしても,契約期間満了後も賃借人が建物に住み続けていたばあい,賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ,借家契約はやはり法定更新されたこととなります。

そして,法定更新された借家契約の内容は,更新前の借家契約と同じものになります。したがって,賃借人は,更新前と同じ賃料を支払い続ければいいことになります。ただし,契約期間は更新前と同じではなく,期間の定めがないものとなります。

期間の定めのない借家契約

期間の定めのない借家契約の場合,借家契約を終了させたいのであれば,賃貸人と賃借人は,いつでも相手方に解約を申し入れることができます。ただし,賃貸人が解約の申入れをしたばあい,その解約申入れに正当事由のあることを要し,また,解約申入れから6か月経過することをもって借家契約は終了します。

立退料の性質

立退料の法的性質 立退料は,当事者間の合意に基づき,任意に支払われるべきものであり,賃貸人が立退料の支払を法的に強制されることはありません。しかしながら,実際上の問題として,立退料の支払には法的根拠がないと賃貸人が主張するだけでは,賃借人も態度を硬化させ,建物明渡しの問題は解決を見ない可能性が高くなるでしょう。
正当事由の補完 また,仮に裁判手続きに移行したとしても,契約の更新を拒絶すること(期間の定めがある借家契約について),あるいは解約を申し入れること(期間の定めがない借家契約について)に関して正当事由の有無を判断するばあい,立退料を支払うことを提示していれば,それは正当事由があるということのひとつの事情として考慮されます(法28条)。それだけ建物の明渡しが認められる可能性は高くなるわけです。
立退料の算定について 立退料は,一般には,賃借人の引越費用や新たな物件を借りるに際して必要となる敷金・礼金等の移転にかかる実費と,立退きにより消滅することになる借家権の財産的価値を基準にして,算定することになるといわれています。明渡交渉が難航しており,立退料の金額も定まらない場合などには,まず賃借人に移転費用などの実費を算定してもらい,その金額を基準にして,その金額にどの程度の上乗せが可能なのかを検討し,賃貸人から立退料を提示することもひとつの方法として考えられるでしょう。

賃貸人の部屋への立入り

賃貸人が,建物内部の様子を確認するため,マスターキーなどを使って建物内部へ入ることは許されるでしょうか? この点については,賃借人の部屋へ勝手に入る行為は,たとえ賃貸人であっても刑事上は住居侵入罪などの犯罪行為に該当する可能性があり,また,民事上も違法な行為として慰謝料などを請求される可能性が高いと考えます。したがって,賃借人に無断でその部屋へ入るべきではありません。これは,同居をしていない近親者からの了解を取り付けたとしても,同様です(このような近親者には,部屋へ立ち入ることに同意する権限がそもそもありません)。建物内部へ入るためには,賃借人本人の同意が必要なのです。また,賃借人に無断で部屋へ立ち入ることができるとの特約があるばあいであっても同様です。ただし,例外的に,部屋から水漏れがあったり,内部から異臭がしたりする緊急やむをえない特別の事情が存するばあいなどに,必要な範囲でのみ賃貸人が建物内部へ入ることが許されると考えます。

隣室の騒音

隣室に抗議する前に,念のためにその音が常識に反した「騒音」といえるかどうかについて,第三者の意見を聞いてみることも必要でしょう。また,万一に備えて,騒音をテープレコーダに録音したり,いつどのような内容の,どの程度の音がしたのか,また騒音に関し隣人とどのようなやり取りをしたのかについても,ノート等に書留めたりして,物的な証拠を残すようにしましよう。さらに,騒音測定器で数値として記録できるならば,いうことはありません。法律的な「受忍限度(それを越えないと権利の侵害として損害賠償請求などの法律的な請求をすることはできません。)」と社会的な常識は完全に一致するものではありませんが,少なくとも後者に違反しない以上前者を越えることはありません。もし,隣室の騒音が社会常識に反する程度に達していれば,あなた以外の隣人もあなたと同様の思いをしているはずです。

隣人に注意する場合,家主さんや管理人さんを通じて(苦情の出所を明らかにしないで)それとなく注意してもらう方法も考えられます。これは,家主側に対して,借家人間で「騒音」の問題が生じていることを知らせておくという点でも意味があります。話合いによる解決ができないばあい,当事者の合意を基調とした調停や客観的な証拠に基づく公権的な判断による訴訟を前提とした法的問題としての対応が必要になります。請求の相手方としては,まず隣室の住人が思い浮かぶでしょうが,家主になります。家主は賃貸物件を本来の使用目的に適合した状態で提供する義務があり,隣家の騒音が借家人の日常生活に障害をおよぼす状況になっていれば,それは借家人に対して,借家契約上の債務不履行になるからです。そこで,家主に対して内容証明郵便等で,隣室の騒音の状況や交渉の経緯を説明して,ただちに騒音を止めさせるための処置をとるよう要求します。家主とすれば,借家人間のもめごとに対する傍観者ではなく,自分自身が直接の当事者になるのですから,問題を放置することなく何らかの対応をしなければなりません。それでも解決しないばあいには,家主を相手に,損害賠償を求める調停や訴訟を申し立てることになります。